甘く、みずみずしい夏の果物、桃。
桃は、豊富な水分を含み、カリウム、食物繊維、ビタミンC、ビタミンEなどを摂取できる果物です。
その一方で、桃は栄養面だけではなく、古くから生命力や長寿、魔除けを象徴する特別な果実としても大切にされてきました。
古代中国では、不老長寿をもたらす「仙果」とされ、日本の神話では、黄泉の国から追ってきた魔物を退けた果実として登場します。
また、東洋の伝統的な食養生では、桃は「陽」の性質を持つ果物と考えられることがあります。
一般的に夏の果物は、体の熱を冷ます性質を持つとされるものが多い中で、桃は比較的、体を冷やしにくい果物として紹介されることがあります。
ただし、これは現代医学における治療効果や、体温を上げる効能を示すものではありません。
この記事では、桃に含まれる栄養素から期待できる働きと、古くから桃が持つと考えられてきた生命力や魔除けの文化的背景を、詳しくご紹介します。
桃に含まれる主な栄養素
桃は、果肉の大部分を水分が占める、みずみずしい果物です。
生の白肉種の桃は、可食部100gあたり約38kcalで、約9割が水分です。
脂質が少なく、カリウム、食物繊維、ビタミンC、ビタミンEなどを含んでいます。
- 水分
- カリウム
- 食物繊維
- ビタミンC
- ビタミンE
- 糖質
桃だけで、健康に必要な栄養素をすべて摂取できるわけではありません。
主食、主菜、副菜を基本とした食事へ、季節の果物として取り入れることが大切です。
桃の約9割は水分
生の白肉種の桃は、可食部100gのうち約88.7gが水分です。
つまり、桃の果肉の約9割は水分で構成されています。
汗をかきやすい夏は、体内の水分が失われやすい季節です。
桃はみずみずしく、果肉も比較的やわらかいため、夏の間食や食後の果物として取り入れやすい食品です。
食欲が落ちやすい時期でも、桃の甘い香りや、なめらかな口当たりであれば食べやすいと感じる方もいるでしょう。
ただし、桃だけで一日に必要な水分を補えるわけではありません。
日常の水分補給は、水やお茶などの飲み物を基本とし、桃は食事から水分を取り入れる方法のひとつとしてお楽しみください。
カリウムが体内の水分と塩分のバランスを支える
桃には、可食部100gあたり約180mgのカリウムが含まれています。
カリウムは、人体に必要なミネラルのひとつです。
体内の水分やナトリウムのバランスを保つ働きに関わり、神経の情報伝達や、筋肉が正常に働くためにも必要です。
食塩を多く摂りやすい食生活では、野菜や果物などからカリウムを摂取することも大切です。
桃だけで一日に必要なカリウムを補えるわけではありませんが、旬の果物として食生活へ取り入れることで、カリウムを摂取できます。
なお、腎機能が低下している方や、医療機関からカリウム制限を指示されている方は、桃を食べる量について医師や管理栄養士へ相談してください。
食物繊維がおなかの調子を整える食生活を支える
桃には、可食部100gあたり約1.3gの食物繊維が含まれています。
食物繊維は、人の消化酵素では消化されにくく、小腸を通って大腸まで届く成分です。
便のかさを増やす材料となり、腸内細菌にも利用されます。
桃を食べるだけで便秘が必ず改善するわけではありませんが、食物繊維と水分を含む果物として、便通を整える食生活の一部に取り入れることができます。
野菜、豆類、海藻、きのこ、いも類、穀類などと組み合わせ、食事全体で食物繊維を摂取することが大切です。
ビタミンCとビタミンEの抗酸化作用
桃には、ビタミンCとビタミンEが含まれています。
ビタミンCとビタミンEは、体内で発生する活性酸素の働きを抑える、抗酸化作用を持つ栄養素です。
ビタミンCは、皮膚や血管、軟骨などを構成するコラーゲンの生成にも必要です。
また、植物性食品に含まれる鉄の吸収を助ける働きにも関わっています。
ビタミンEは、細胞膜に含まれる脂質の酸化を抑える働きがあります。
桃は、キウイフルーツや柑橘類などと比べると、ビタミンCが特に多い果物ではありません。
しかし、生のまま食べることが多いため、加熱せずに栄養素を摂取しやすい果物です。
桃は美容によい?
桃には、水分、ビタミンC、ビタミンEなど、皮膚や体の健康維持に関わる栄養素が含まれています。
そのため、健康的な食生活の中で、美容に関わる栄養素を補う果物のひとつとして取り入れることができます。
ただし、桃を食べるだけで肌が急にきれいになったり、特定の肌悩みが改善したりするわけではありません。
肌の健康には、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどをバランスよく摂ることが必要です。
十分な睡眠、紫外線対策、適度な運動なども含め、生活全体を整えることが大切です。
桃はむくみ対策になる?
桃に含まれるカリウムは、体内の水分やナトリウムのバランスを保つ働きに関わっています。
そのため、桃はカリウムを含む果物として、塩分を摂りすぎない食生活を考える際の選択肢になります。
ただし、桃を食べれば、むくみが治るというわけではありません。
むくみには、塩分の摂りすぎ、長時間同じ姿勢で過ごすこと、運動不足、睡眠不足など、さまざまな原因があります。
心臓、腎臓、肝臓などの病気が原因となる場合もあります。
むくみが続く場合や、急に強い症状が現れた場合は、食品だけで対処せず、医療機関へ相談してください。
桃は「陽」の果物とされてきた
東洋の伝統的な食養生や陰陽の考え方では、食べ物を「陰」と「陽」の性質に分けて捉えることがあります。
一般的に、水分の多い夏の果物は、体の余分な熱を冷ます「陰」の性質を持つと考えられるものが多くあります。
その中で桃は、夏に旬を迎える果物でありながら、比較的「陽」の性質を持つ果物として紹介されることがあります。
そのため、伝統的な食養生では、桃は体を過度に冷やしにくい果物と説明されることがあります。
桃の温かみのある色、甘い香り、種から芽を出して成長する強い生命力も、「陽」の印象と結びつけられてきました。
ただし、この「陰」や「陽」は、伝統的な思想や食養生に基づく分類です。
現代医学上、桃に体温を上昇させる効果や、冷えを治療する効果が認められているという意味ではありません。
体質や体調によって、食べ物を食べたあとの感じ方は異なります。
桃は、伝統的には生命力を象徴する「陽」の果物として捉えられてきたという文化的な背景としてお楽しみください。
桃が邪気を払うと信じられてきた理由
桃は、古くから生命力や長寿を象徴し、邪気を払う果物として大切にされてきました。
桃が魔除けの力を持つと信じられてきた背景には、古代中国の伝説と、日本の神話や宮中行事が深く関係しています。
桃の鮮やかな色、春に咲く美しい花、多くの実を結ぶ生命力は、悪いものを退け、新しい生命をもたらす象徴として考えられてきました。
古代中国で桃は「仙果」とされた
古代中国では、桃は不老長寿をもたらす「仙果」と呼ばれました。
桃の木は「仙木」とされ、悪霊や邪気を退ける神聖な木と信じられていました。
中国の伝説では、仙人が桃を食べて不老不死になったと語られています。
特に、西王母という仙女が育てる桃は、数千年に一度しか実らず、その桃を食べると不老不死になるという伝説があります。
このような伝説から、桃は長寿、健康、繁栄をもたらす神聖な果実として扱われるようになりました。
桃の果実だけではなく、桃の木や枝にも、悪い気を遠ざける力があると考えられていました。
『古事記』に登場する、魔物を退けた桃
日本の神話でも、桃は邪気を払う強い力を持つ果実として描かれています。
『古事記』には、イザナギノミコトが黄泉の国から逃げ帰る場面があります。
黄泉の国から追いかけてきた魔物たちに対し、イザナギノミコトが桃の実を投げつけると、魔物たちは退散しました。
この働きによって、桃には「意富加牟豆美命(おおかむづみのみこと)」という神名が与えられたと記されています。
イザナギノミコトは桃に対し、自分を助けたように、地上の人々が苦しんでいるときにも助けるようにと告げました。
この神話は、日本で桃が魔除けや厄除けの象徴とされる大きな理由のひとつです。
宮中行事で使われた桃の弓
桃の魔除けの力は、物語の中だけではなく、日本の宮中行事にも取り入れられました。
奈良時代や平安時代の宮中では、大晦日に「追儺(ついな)」と呼ばれる厄払いの儀式が行われていました。
追儺は、病気や災いをもたらす鬼や邪気を追い払うための儀式です。
この儀式では、桃の木で作られた弓や、桃の枝が用いられたとされています。
桃の木には、目に見えない邪気を遠ざける力があると信じられていたためです。
追儺は、現在の節分につながる行事のひとつとも考えられています。
桃太郎が桃から生まれた理由
日本を代表する昔話『桃太郎』でも、桃は特別な力を持つ果実として登場します。
桃太郎は、大きな桃から生まれ、やがて鬼ヶ島へ向かい、鬼を退治します。
桃太郎が桃から生まれた理由には、桃が邪気を払い、鬼を退ける神聖な果実と考えられてきた背景が関係しているという説があります。
桃太郎の物語は、古代中国や日本神話に伝わる「桃の魔除けの力」が、昔話として形を変えて受け継がれたものとも考えられます。
桃から生まれた英雄が鬼を退治するという物語は、桃が持つ生命力と、邪気を退ける力を象徴しています。
桃の鮮やかな色と生命力
桃が生命や魔除けを象徴するようになった理由には、果実の姿そのものも関係しています。
桃は、春になると淡い桃色の花を咲かせ、夏には豊かな実を結びます。
一本の木に多くの花と実をつける姿は、繁栄や生命力を感じさせます。
また、白から紅色へと色づく果実は、太陽や血、生命の力を連想させます。
丸く、ふっくらとした形も、豊かさ、長寿、子孫繁栄の象徴とされてきました。
桃は、栄養を含む食べ物であると同時に、人々の願いや祈りを託されてきた果実でもあります。
桃のカロリーは100gあたり約38kcal
生の白肉種の桃は、可食部100gあたり約38kcalです。
甘みがあるため、カロリーが高いと思われることがありますが、果肉の約9割が水分で、脂質は非常に少ない果物です。
可食部を200g食べた場合は、単純計算で約76kcalになります。
桃一玉の重量や可食部の量は、品種や大きさによって異なります。
大玉の桃を一玉食べる場合と、小玉の桃を食べる場合では、摂取するカロリーや糖質量も変わります。
桃の糖質は高い?
生の桃の炭水化物は、可食部100gあたり約10.2gです。
そのうち、体内でエネルギーとして利用される利用可能炭水化物は、100gあたり約8.0gです。
桃の甘みは、果糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖類から生まれます。
適量を生の果実として食べる場合は、水分や食物繊維も一緒に摂取できます。
ただし、一度に何玉も食べれば、糖質やエネルギーの摂取量は増えます。
糖尿病などで血糖値を管理している方や、糖質量を調整している方は、医師や管理栄養士から指示された量を守ってください。
生の桃とジュース・缶詰の違い
桃の栄養を取り入れるのであれば、生の果実をそのまま食べる方法がおすすめです。
生の桃は、果肉に含まれる水分や食物繊維を一緒に摂取できます。
桃ジュースは、製造方法によって果肉や食物繊維が取り除かれていることがあります。
砂糖や果糖ぶどう糖液糖などが加えられた商品では、生の桃より糖質やエネルギーが多くなる場合があります。
桃の缶詰も、シロップ漬けの商品では糖質やカロリーが高くなる傾向があります。
ジュースや缶詰を選ぶ際は、原材料表示と栄養成分表示を確認してください。
桃の皮にも栄養はある?
桃の皮には、果肉と同様に食物繊維などの成分が含まれています。
皮のすぐ近くは、桃らしい香りや味を感じやすい部分です。
表面の産毛を流水でやさしく洗い落とせば、皮ごと食べることもできます。
ただし、桃の皮や産毛によって、口の中に刺激を感じる方もいます。
皮の食感が苦手な方や、刺激を感じやすい方は、無理に皮ごと食べる必要はありません。
皮をむいても、果肉に含まれる水分や栄養素を摂取できます。
桃を食べる量の目安
健康的な食生活では、さまざまな果物を合わせて、一日200g程度摂取することが目安とされています。
これは、毎日桃だけを200g食べるという意味ではありません。
桃、りんご、みかん、ぶどう、バナナなど、複数の果物を含めた一日の合計量の目安です。
桃一玉の大きさや、種を除いた可食部の量は、品種によって異なります。
大きな桃を一度にすべて食べる必要はありません。
半分ずつ分けたり、家族で分けたりしながら、ご自身の食生活に合わせて取り入れてください。
桃を食べるのにおすすめの時間
桃を食べる時間に、絶対的な決まりはありません。
朝食の果物、昼間の間食、食後のデザートなど、生活に取り入れやすい時間にお召し上がりください。
朝食では、ヨーグルト、卵、チーズなどと合わせることで、たんぱく質も一緒に摂取できます。
間食では、菓子類の代わりに桃を選ぶことで、脂質を抑えながら果物を摂取できます。
夜に食べてはいけないわけではありませんが、就寝直前に大量に食べるよりも、日中や食事の一部として適量を楽しむ方が取り入れやすいでしょう。
桃のおいしさと栄養を楽しむ食べ方
桃は、冷やしすぎると甘みや香りを感じにくくなることがあります。
届いた桃がまだ硬い場合は、直射日光の当たらない、風通しのよい涼しい場所で常温保存してください。
甘い香りが立ち、果実を手のひらで包んだときに、わずかなやわらかさを感じたら食べ頃です。
召し上がる2〜3時間ほど前に冷蔵庫へ入れ、ほどよく冷やしてください。
冷蔵庫から出した直後よりも、数分置いて少し温度が戻った頃の方が、桃の香りを感じやすくなります。
まずは、何も加えず、そのまま味わってみてください。
品種ごとに異なる甘み、香り、果汁、酸味、食感を楽しめます。
桃を食べる際の注意点
桃アレルギー
桃を食べたあとに、口や喉のかゆみ、唇の腫れ、じんましん、咳、呼吸の違和感などが現れることがあります。
症状が出た場合は、食べるのを中止してください。
息苦しさ、強い腫れ、意識の異常などがある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
腎機能が低下している方
桃にはカリウムが含まれています。
腎臓病などによりカリウムの摂取量を制限されている方は、医師や管理栄養士の指示に従ってください。
血糖値を管理している方
桃には、果糖、ブドウ糖、ショ糖などの糖類が含まれています。
糖尿病の治療中など、糖質量の管理が必要な方は、食べる量やタイミングについて医療専門職へ相談してください。
一度に食べすぎない
桃は水分や食物繊維を含んでいますが、一度に大量に食べると、おなかがゆるくなったり、腹部に不快感が出たりすることがあります。
体調に合わせて適量をお召し上がりください。
桃の栄養素と文化的な意味のまとめ
桃は、約9割が水分で、カリウム、食物繊維、ビタミンC、ビタミンEなどを含む夏の果物です。
- 水分を多く含む
- カリウムが体内の水分や塩分のバランスに関わる
- 食物繊維がおなかの調子を整える食生活を支える
- ビタミンCとビタミンEが抗酸化作用を持つ
- 100gあたり約38kcalで、脂質が少ない
また、桃は栄養を持つ果物であるだけではありません。
- 古代中国では不老長寿をもたらす「仙果」とされた
- 桃の木は邪気を払う「仙木」と考えられた
- 『古事記』では、魔物を退けた果実として登場する
- 宮中の厄払いでは、桃の木で作られた弓が用いられた
- 桃太郎が鬼を退治する物語にも、桃の魔除けの力が表れている
- 伝統的な食養生では「陽」の果物とされることがある
桃は、生命力、長寿、繁栄、魔除けへの願いを託されながら、長い年月をかけて人々に愛されてきました。
栄養だけではなく、品種ごとに異なる味や香り、そして桃に受け継がれてきた物語も、その魅力のひとつです。
IRIE-FARMでは、山梨県笛吹市の畑で一玉ずつ状態を確認し、その時期に旬を迎えた桃を農園からお届けしています。
古くから生命の象徴とされてきた桃を、旬の味わいとともにお楽しみください。
※掲載している栄養成分は、日本食品標準成分表に収載された白肉種・生の桃の可食部100gあたりの数値をもとにしています。品種、栽培条件、熟度などにより実際の数値は異なります。
※「陰」「陽」や「体を冷やしにくい」という表現は、東洋の伝統的な食養生や文化的な考え方に基づくものです。現代医学上の治療効果や、体温を上げる効果を示すものではありません。
※本記事は一般的な栄養情報と文化的背景を紹介するものであり、病気の診断、治療、予防を目的とするものではありません。持病がある方や食事制限を受けている方は、医師または管理栄養士へご相談ください。